2016.8/26
コレクターとの対話
李朝鉄砂徳利 非売品 刷毛目盃 売約済み
この李朝鉄砂の徳利を初めて見たのは、この徳利の前オーナーがやっておられた飲食店の紹介の雑誌でした。
この徳利が脳裏から離れず、すぐにその店を訪ねました。
欲しくてたまらなかったのですが販売しているわけではなかったので、半ば諦め乍らその店に通い、それとなく勝手に自分の思いを前オーナーに伝えて来ましたが、数十年間変わらない返答で首を縦に振る事はありませんでした。
その後、そのお店が自宅の近くに引っ越されてきたこともあり、お店に伺う頻度も更に増え、徳利への思いも増すばかりでした。
数年前頃から、会話もくだけたことを話せるようになり、店の存続の難しさやコレクションの処分の事などを少しずつ口にされるようになってきたので、改めてこの徳利への思いを話すと、ようやく譲って頂けることになりました。現在はわたしの手元にあります。
この徳利を見ていると、色々なことが浮かんできます。前オーナーは勿論の事、その方がやっておられたお店の事です。
いつ伺っても他のお客さんがいることは少なく、店内にはいつも野の花が生けられ、李朝磁器や木工品などが並べられ、一人で時を過ごすには最適な場所でした。
日本にいながら、韓国の李氏時代を想像させてくれるような店でした。
以前ブログで紹介した工芸青花の第5号の表紙に、奠雁(鴨)の李朝時代の木工品のシルエットを掲載して頂いたことがあります。その奠雁もその時に譲って頂いたもので、最近、新潮社の方が偶然に前オーナーと会われ、その表紙をお見せしたところ、シルエットですぐにその作品だとわかったそうです。
李朝刷毛目の盃は知人からの連絡で、女性のコレクターが手放すのだけれど金額が高いと言って紹介されたものです。拝見した瞬間にサイズとしては申し分ないうえに刷毛目も厚くかかり大変魅力的なのですぐに譲って頂きました。口がべべらのようになっており、祭器として作られたものですが数少ないものです。
こちらは当店のお客様に納めさせて頂き、今でも大変喜んで頂いております。
この仕事をしていると仕入れは様々あるのですが、やはり長くコレクションされてきた作品は魅力的なものが多いものです。