2025.3/17
展示会記録|仕覆のすすめ −骨董と裂の愉しみ方–
2024年2月に大塚美術にて開催した「仕覆のすすめ −骨董と裂の愉しみ方–」展。
普段はスポットの当たらない仕覆を主役に、“骨董の愉しみ方”にフォーカスした本展は、私たちが思っていた以上に多くの方からご好評頂きました。
改めて仕覆制作を担当してくださった先生方、本展にご協力いただいた方々に感謝申し上げます。
展示会は店舗とウェブストアで同時展開したのですが、振り返ってみると記録として残されたものがありませんでした……。
会期から時間が経ってしまいましたが、記録用としてこのブログを投稿します。
たいせつな道具を守るために包んで保護するための袋。
用途を果たすだけならどんな布でもよかったでしょう。
包まれた姿も美しくしたいという愛着心は、「仕覆」という品格ある袋の形を生み出しました。
表布、裏布、御の取り合わせから成る仕覆は、主となる表布選びに始まり、それを引き立てる裏布選び、物に合わせた型紙作り、縫製、組紐作りと、手仕事による多くの工程を経て出来上がります。
現在では型にはまらない自由な裂合わせで、茶器、酒器、文房具、金工品など、幅広いものに誂えられるようになり、骨董・工芸の愉しみ方のひとつと言えるまでになりました。
本展では、私たちが集めた道具、そしてその道具のために誂えた仕覆を展示いたします。
取り合わせ次第でモノの魅力も深まる仕覆の世界をお楽しみ頂けたら幸いです。
会期中は仕覆の受注相談も承りますので、愛蔵品をご持参ください。
仕覆のすすめ −骨董と裂の愉しみ方−展
会期|2024年2月2日(金)−2月10日(土)
会場|大塚美術
初期伊万里染付福寿猪口 日本, 江戸時代17世紀
市松文更紗 インド, 19世紀
−
「福寿、福寿、福寿……」
長寿と幸福への願いはまるで空也の念仏のように…。
藍×アイボリー×茶の市松模様が瀟酒な印度更紗の仕覆。
酒器らしく、おしゃれに。
阿蘭陀花鳥文茶碗 17世紀末
茜地獅子文更紗 ヨーロッパ19世紀
−
古渡のオランダ茶碗には、シノワズリの欧羅巴更紗を。
17世紀ヨーロッパの東洋趣味。時代の気分を高める相乗効果。
これ以上ないほどの組み合わせ。
高麗青磁蓮華文筒茶碗 朝鮮半島, 高麗時代12世紀
茶色地両鋸歯文更紗 インドネシア, 19-20世紀
−
素地を縦方向に削ぎ落とし面を取った上から、線刻による蓮弁文を重ねた高麗青磁。
筒形も相まって縦のラインが印象的な茶碗には、両鋸歯文のインドネシア更紗を着せて。
作品性を裂という形で表すのもまた一興。
井戸釉徳利 [黒田辰秋旧蔵] 朝鮮半島, 朝鮮時代初期
緑地丹波布片身替 日本, 幕末−明治時代
−
黒田辰秋旧蔵の井戸徳利。
無骨な形と硬質な釉調が調和します。
片身替で仕立てた丹波布の仕覆。民芸に洗練を加えた旧蔵者に思いを馳せて。
神護寺経経帙蝶形金具 日本, 平安時代12世紀
金茶地草花文銀欄 日本, 江戸時代
−
小さな蝶形金具は、神護寺経を10巻ずつ巻いた経帙に取り付けられた打ち出し金具。
数奇者より香合に仕立てられたものです。
茶事では序盤に登場する香合。香りと共に、すぐさまその場を平安の風雅へと誘います。
銀欄の仕覆で、格調高く。
李朝初期白磁小瓶 朝鮮半島, 朝鮮時代16世紀
幾何学文経緯絣[パトラ/益田間道] インド, 19世紀
−
振出しにぴったりな白磁小瓶。
「李朝初期のこのタイプの小瓶か。特別珍しくもないよね。」と侮るなかれ。
白磁の釉調、上がり、抜群です。ピリリと光る小品には、特別な裂を。
益田間道の別称で知られるインドの経緯絣。黄色の緒が華やかです。
李朝三島暦手沓茶碗 朝鮮半島, 朝鮮時代15–16世紀
唐木綿 中国, 清朝中期
−
片口にするもよし。
沓茶碗にするもよし。
へうげた三島碗を生かすも殺すも所有者次第。
唐木綿の仕覆、中込と柱も誂えた特別な仕立てです。
仕覆制作に関してはこちらのブログもご覧ください
▶︎
blog|袋をつくるということ
大塚美術ウェブストア[仕覆見本帖]では古裂と緒の取り合わせをご紹介しています
▶︎
[仕覆見本帖]をみる
※掲載したお品は全てご売約済みです
一覧へ戻る