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2013.10/7

可愛い水滴!



李朝時代中期 水滴  (御売約済み)

   



先日、美術クラブの交換会でこの水滴を見つけるなり、商売関係なく所有欲が湧きあがって来た。
美術倶楽部の大会は前日が下見で翌日が競りになる。もう見た瞬間からこの一点が気になってしょうがない。倶楽部主催の交換会は全国から有名な古美術店が全て参加して来られるので安く購入出来た事がない。でも今回はもしかしたらと毎回思う。

自分なりに値踏みをして、お目当ての物の競りが始まるまで気が気でない。交換会当日、仲の良い業者に「あの水滴、可愛いですよねぇ~。欲しいですけど、いくらぐらいするんですかね?」などと聞かれたり、後輩業者に「いくら踏んだら買えますか?大塚さんもいくんですか?」などと聞かれ結構人気があるのでますます不安になる。人それぞれの踏み値で成り立っている古美術の交換会なので、物によっては100倍ぐらいの開きがあることもある。今回の水滴はわずか2cm四方の小物なので気がつかない人がいたり、気がついても踏み値は結構安いんじゃあないか?などと都合の良いように考える。

競りが始まる前は何回も作品を見に行けるので、数回行くうちにお目当ての商品がどのぐらいの人気商品であるか、だいたいわかるものだが、そんな時に、いつも李朝を競り合う業者が水滴を手に取り、こちらを見てニヤリとした!
もうダメだぁ~安くは買えない!!!!
案の定、活発な競りではじまり、結果、踏み値いっぱいの値で競り落とした。
それでも今日一日で何点かの仕入れができたのだけれど一番嬉しい。店に帰ると常連のお客様のXXXさんがいらっしゃっていたので水滴をみせるなり、「可愛いですねぇ~肌もきれいだし、おいくらですか?」と聞かれ、売価を言うと「欲しいので売ってください。」と即座に言われ、「今日はお金を持参していないし、どうせ大塚さんも何日か楽しみたいでしょう~?」
なんて言われてしまい、あっさり購入から数時間でコレクターに収まることになりました。

その夜、帰宅して娘に水滴を見せると「可愛いねぇ、東博で見た水滴に似てるね?」と言われ、昨年、新しくなった東博の東洋館を二人で見に行った折に、その水滴の前で「こんなに可愛い水滴もあるんだね?こんなの欲しいねぇ~」と会話した事を思い出しました。
御売約を頂いてから、お客様のご都合でほぼ一週間ぐらいは眺めたり、手の中で遊んだりして楽しませて頂いておりましたがお客様が引き取りにみえ、奥様との食事のお約束の時間までを店で過ごして行かれました。後日、聞いた話ですが奥様に水滴をレストランで見せるなり、「可愛い~」と言われ、手に取られたそうです。

この水滴は益子の浜田庄司さん旧蔵のもので、このような小さい水滴は数は多くありません。図録などでは時折見かけますが、現物を見ないと物のイメージは伝わらないと思います。
このような小さい水滴は、多分上流階級のご婦人の化粧の水滴だったと思われます。この作品は李朝中期の広州官窯の物で、俗に言う金砂里窯のものです。上面には李王家の紋章とされる梨の花が描かれ、側面は雲鶴文です。



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