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2010.5/28

数寄者の残照

お店の応接間に大聖武の軸を掛け、李朝白磁の俵壺に
花を入れ、唐津の茶碗に抹茶を入れ、ポットから湯をだして一服

これって作法から言ったら目茶苦茶なんだろうなぁ~
などと思いながらも、気分はいい。

骨董屋もコレクターと同じで、気に入ったものが
手に入るとすぐに楽しみたくなる。



この軸は大聖武と言い、元東大寺伝来の重宝であったことから
聖武天皇筆と伝えられ、特殊な料紙を荼毘紙と呼び、
古筆愛好家の間では、最も大切にされてきました。

一流の古筆手鑑には巻頭に必ずこの断片数行を貼ることが
慣例のようになり、大聖武を欠いては、手鑑として体栽を
成さないとさえ思われたほどです。

近年まで招来経ではないかとも言われていましたが、
近年の調査で荼毘紙はマユミから造られた、マユミ紙であることが
確認され、これによって日本で書写された事が確定的になりました。

東大寺には一巻残すのみで
数巻が東京国立博物館他に収蔵(いずれも国宝)されています。

この軸は三行の断簡ですが、
「高貴な人々だけが通ることを許された大路から
城門に赴くと、国中の人々はその楼閣の上を大路の両側から競い合う
ように見て飽き足りることが無かった。皆が口々に言うには・・・」と訳されます。

古い箱に納められ、軸端も仏表装の毛彫り風で
表具も前所有者の数寄者度が解り、好ましいと思い購入し、
店に帰り、早速飾ろうと箱を開けて見ると、前所有者は几帳面らしく、
昭和8年に表具にしたと書付が残されていました。

李朝白磁の俵壺は最近知り合いの業者が展示会をした折に
お客様の預かり物と言われ見せてくれた物を、手に入れたものです。
最初は可愛いなぁ~と思った程度でしたが
どうしてもこれに花を入れて飾りたい心境になり、購入しました。
何かを購入する時に、その物自体の美だけで購入する事が
多いのですがこの壺はまっ先に花が浮かんできた小壺です。

多分前所有者も同じような気持だったと思います。

このように小型の可愛い俵壺は、あまり見かけないので、
今では良かったと思っています。伝来などと大げさなものではなく、
どちらも数寄者の残照が残っているような気がします。

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