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2010.10/31

澗松美術館

年にたった2回だけ、不定期にオープンする・・・
韓国にそんな美術館があります。

「澗松(カンソン)美術館」は
ソウル中心部から北東に位置します。

常設展示がなく、年に2回、5月と10月の2週間だけ
企画展示で開放される韓国初の民間美術館です。



創設者は全蛍弼(チョン・ヒョンピル) 氏。
大富豪の次男坊で、その号である「澗松」から
命名されました。



韓国美術の海外流出を防ぎたいという一心で
氏は1930年頃から韓国美術の蒐集に生涯をかけて、
国宝12点、宝物・文化財14点という
超一流のコレクションを所蔵し、
現在も子孫に受け継がれているそうです。

この10月は17日から31日まで開館していて、
運良く仕事の兼ね合いで拝観することができました。



建物は古く、こじんまりとした2階建ての構えで、
庭先には古石でできた宝塔や仏像がなにげなく
置かれています。

今回惜しい事に陶磁器の展示はなかったのですが、
「動植物が描かれた絵画」の展覧会で、
金弘道はじめ李朝中期以降の著名な画家の作品を
じっくり見ることができました。

李朝の染付でも描かれる
竹笹、梅、葡萄に秋草、蝶や蘭、
十長生に出てくるような鹿や鳥などなど・・・

紙や絹と陶磁器の絵付けでは
だいぶ勝手が違うのでしょうけれど
ついつい染付磁器の絵付けを思い出しながら
見てしまいます。

李朝の染付といえば後期のものが最も多く、
その中で古いものになると18世紀、
多くは19世紀と分類されています。

展示されていた絵画は
主に16~17世紀(李朝中期)のもの中心なのですが、
だんだん絵を見るうちに
後期の染付磁器も、18~19世紀という時代ではなく
実はもっと古くからあったのではないか?
そんな気すらするくらい共通点がたくさんありました。

きっとこの時代の絵画は100年後とか、それ以上後も
画院や陶工のお手本になっていたのでしょうね。

日本同様、韓国絵画の中に漂う時代の気分は
中国の文化の変遷とともに変化してゆくのですが、

元・明・清と時代がかわっても、李朝絵画の
どこかユーモラスで気取りがないあたたかな視点や描写は
韓国独特の画法として受け継がれていたのだなぁと
あらためて実感することができました。

素晴らしい展覧会でしたが、
日本語の図録と、陶磁器の図録が出ていなかったのが
非常に残念でした。

澗松美術館
+82-(0)2-762-0442
ソウル市城北区 城北洞(ソンプクドン) 97-1
最寄駅/地下鉄・漢城大(ハンソンデ)駅
入館料は無料のようです。

従業員T

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