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2017.11/25

白磁鉄砂花文小壺

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(売約済み)  


白磁鉄砂の始原は今なお明らかではありませんが、15~16世紀の粉青沙器や白磁象嵌などに同じ特徴を持つ例があることから、その起源を15世紀頃とする説が有力であります。しかしその頃の遺例品は非常に少なく、白磁鉄砂が隆盛をみるのは17世紀です。その余韻は18世紀まで続き、文様は画院による格調の高く写実的な数少ないものから、陶工による抽象文様に至るまで作風は多岐にわたっています。
飄逸洒脱な文様はこの頃の民衆の旺盛な生活力をうかがわせます。この時代の青花作品の場合は、材料がきわめて高価で貴重だった為に、筆を惜しむ傾向がありましたが白磁鉄砂の場合は豊富な鉄絵具をたっぷりと使い自由に大らかな絵付けをおこないました。釉胎は必ずしも精選されてなく、灰色を帯びたものが多く、これは主に地方窯で生産されていた為、釉胎と酸化焔による焼成が影響しております。
映像の白磁鉄砂の小壺は釉胎は精選された白色で小花一輪が鉄絵具で書かれております。この小花も高麗時代の象嵌や絵高麗に良く見られる文様です。口の返りや高台、膚の感じからして、李朝初期とするのが妥当だと思いますが高麗末に近い頃の作品だと思います。いずれにしても、数も少なく貴重なものなので類品も少なく比較対象できないのですが、昭和61年に大阪東洋陶磁美術館に於いて開催された、李朝鉄砂展の図録に類品がただ一点所載さており、それによると16~17世紀となっております。可憐な花一輪が描かれた愛らしい作品ですが、私にはどうしてももう少し時代が上るような気がするのです。


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