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2013.7/18

美術商の100年



ここに東京美術倶楽部百年史という、一冊の分厚い本があります。これは2006年に東京美術倶楽部が創立百年を迎えた記念に倶楽部員に配られたもので、創立の1907年からの美術倶楽部の歩みのような記録です。主に大名や華族、名家の大規模な売り立ての記録などが一冊にまとめられており、現在美術館に収蔵されている名品なども、倶楽部の売り立てを通して収蔵された物が多く、一言で言うと「まぁ凄いもんだなぁ~」という感じです。
現在でもある程度高額で良い商品を入手した時に調べると、この本の目録に紹介されていたり、旧大名家から大正や昭和の初めの売り立てに出ていたり、来歴なども調べられる貴重な資料となっています。

圧倒的に茶道具や書画が多いのも時代を反映していると思います。最近ある品物を調べていて、李朝の茶碗以外の物がほとんど出ていない事に気がつきました。先輩や書物で見聞きしていましたが、当時はあまり評価されず安価だった為、相手にされていなかったのかもしれません。高麗青磁は現在、美術館に収蔵されているものが数点紹介されてますが、李朝の白磁類はありません。いまや垂涎の白磁大壷や中期の作品などの出品はなかったようです。ただこの後、昭和初期に李朝の大ブームが起こり李朝の人気と価格高騰はご存知の通りです。骨董と言えども流行りがあり、現在人気の酒器なども一部の茶懐石道具としての物以外はあまり出ておりません。

この本を見ていると、もう既に美術館等の収蔵品となり市場には出て来ない物が数多く掲載されていますが、まだまだ出て来ていない物も沢山ありそうです。
その中のひとつに高麗仏画もありますが、当時は高麗と分からずに売り立てに出ているものが何点かあります。まだ日本のどこかに眠っているのでしょうか・・・



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