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2014.5/31

粉青刷毛目線刻 魚文椀


                              (ご売約済み)     

先日、美術倶楽部で行われた由緒ある交換会で、古いコレクターの収蔵品のなかにこの魚文の鉢があり、久しぶりに興奮して仕入れました。

魚文は図録や展覧会等では、かならず李朝時代の粉青沙器の代表文様のように紹介され、どの美術館にも収蔵されています。粉青沙器は陶器で、白磁とは異なった趣きで李朝陶磁の美さを表しています。

李朝陶磁の基本的な物は、おおらかでこだわりのない造形が認められますが、粉青沙器はそれに野趣に富む奔放さを付け加えた性格のものです。胎土や釉薬においても不純物が入ることを拒まず、むしろ巧みに生かし、成形においても仕上げを敢えて完全に行わず、刷毛目の粗いあとが残り、文様は細部にこだわらずに大胆に切り込んでいます。
李朝前期のこの時代、自然に任せて自由に創作する作風と活力にあふれた時代の精神の反映を見るようで、当時の陶工の息吹さえも感じとる事ができます。

魚はたまごをたくさん産むことで、多産を象徴するおめでたい文様として、粉青沙器に多く描かれたようです。鶏龍山に代表される鉄絵粉青に魚文は多く紹介されていますが、主な文様はイシモチ、太刀魚、コハダなどの実際の魚が描かれたようで、イシモチやコハダは朝鮮では祖先の霊にささげられる物だそうです。この碗の文様はイシモチだと思います。

こちらの画像は大阪東洋陶磁美術館に収蔵されています、同類の鳥文の鉢ですが私にはどうしても同じ陶工の息吹を感じます。このような一見、稚拙で無邪気な作風は現代では無理のような気がいたします。

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