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2014.8/2

酒器


李朝徳利 唐津盃 (2014年10月17~19日 東京美術倶楽部アートフェア出品予定)



伊万里市松文猪口  売約済み   個人蔵

小さな蕾の撮影があり、本が出来上がる頃は東美アートフェアも近いのでタイミングも良いと思い、フェア用に溜めていた物と普段使用している酒器を並べてみました。

 軸は柳宗悦で、心偈(こころうた)の中の五十番目の句です。簡単に言うと「ほれぼれと見守るものを、いつも目前に見て、なぜ両手を打って悦ばないのか、仰ぐべき本尊を心に持つがよい、上は釈迦仏から下は一枚の布、一個の壺で良い。もろ手を打って、讃えるべきものを持つ事が出来れば生活は輝く。何故ならこれで謙譲や、反省や、精進や、清浄や、もろもろの徳に交わる縁と、固く結ばれるに至るからです」。と書かれております。
私はこの句を知った時に、古物で商いをしている人間として非常に心を打たれ、長い間探しておりました。

柳宗悦の字は、人により、クセがなくつまらないという人もおりますが、このような素直な清らかな字体と読みやすさに私は心を打たれます。それは宗悦の物の見方、人格、性格、までも表していると思えるからです。禅僧の書とは違う意味合いを感じ、素直な心になれる気がします。

市松文の猪口は私の大好きな物の一つです。夏は特に、冷酒などにピッたりです。この猪口も人気があるので伊万里の猪口にしては、大変に高価ですがあまり売り物がありません。私の尊敬する先輩のAさんと飲み会があると、どちらかが必ずこの市松文の猪口を持参します。また好きな猪口を選んでと何点か見せると、女性もこの市松を選ぶ人が多いような気がいたします。
 酒器は大人気で、何点持っても欲しいものです。口の悪い常連のお客様からは、売らない骨董屋などと、揶揄されることもありますが、アートフェアに魅力あるものを少しでも出そうと思うと、普段から少しづつ残さないと集まりません。いずれは、どれも手元から必ず離れていってしまうのですが。

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