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2025.12/12

華角貼十長生文函 工芸青花21号







9月末に工芸青花の第21号が発刊されました。

「精華抄」のコーナーに華角貼の函をご掲載頂きましたので、ご紹介いたします。

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華角貼十長生文函 朝鮮時代18-19世紀 高15.3cm

華角貼は仔牛の角を薄く延ばして透明の板を作り、その裏側から赤、黄、緑、金などの顔料で文様を描いて、木製の器面に膠で固定した朝鮮独特の工芸。質素で清廉を理想とする朝鮮時代に極彩色の器物は華角貼が唯一と言ってよく、異彩を放っています。工程が複雑で高価な材料を要する華角貼は、上流階級の女性だけが持つことができた品。数は少ないながら、箱、箪笥、鏡台、糸巻き、筆、物差しなど、豊富な種類が残されています。

本作のような箱は、結納の際に贈られたもの。上面には鶴と鳳凰を向かい合うように配し、側面には虎、鵲(かささぎ)、山羊、龍、海駝など珍しい瑞獣も加わって賑やかな様子。子孫繁栄を象徴するつがいの兎が正面を飾っています。黄の地色は赤に比べると数少なく、面取り部分に赤地の華角板を嵌め込んでいるのも特徴的です。

朝鮮時代の家屋は、儒教の理念のもと男女の生活空間が厳密に区別されました。家長が学問に励み、政治や芸術を論じ合う舎廊棟(サランチェ)は、儒教の徳目を実践する場。一方で母家である内棟(アンチェ)は主婦を中心とした実生活の空間で、家族が集って食事をする場でもありました。男性の空間に属する白磁や装飾を抑えた木製調度品が、儒教的理想を形に表したものであるのに対して、女性の空間に属した華角貼は、家族の繁栄や円満といった日常生活の充実を願った、素顔の工芸と言えるかもしれません。
単色と多彩──当時の朝鮮社会を覆った二元的宇宙観に基づく工芸のありようにも思いが巡ります。

(大塚美術 / 大塚麻央)

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新潮社 『工芸青花』第21号 精華抄 より

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