2019.2/15
「無題」
「無題」と名付けられた絵を、皆さんみたことはあるでしょうか。
画家はなぜ、「無題」という ”題” をつけたのか。
モチーフのない抽象絵画と、その作品につけられる題名との関係性、画家の想い。
川端実もまた、「無題」という絵を残した画家の一人でした。
もちろん、画家ひとりひとりによってその題名に込める想いは異なるとは思います。何も考えていないなんてことも、もしかしたらあるかもしれません。
川端実はあるインタビューで「作品」と題をつけた絵について、こう話しています。
「実は『たたかい』という題をつけてもよいとは思っているが、ただ『たたかい』とつけたとき心配なのは、観る人が狭い意味の『たたかい』たとえば戦争のようなものや、階級闘争だとか、喧嘩のようないわゆる”争い”を想像し、この絵をその狭い枠の中でしかみてくれないという危険があるので……。『たたかい』はむしろサブ・タイトル(副題)だね。」
サブ・タイトルといっていますが、これは川端のこころのなかでのことなので、実際に公表されているわけではありません。あくまでもその絵の題名は「作品」ということになりますね。
川端の場合は、観る人の視野を狭めないためにつけた題名。
「無題」という絵を描く画家は、一体どんな心理で「無題」とつけたのか、すべて知ることは出来ないですが、抽象画を観るにあたって、主役は絵ではなくて ”観る側” なのですね。
つけられた題名を深く考ええるもよし、画家の心理を探るもよし、抽象画にはたくさんの楽しみ方があると思います。
たとえ「無題」と題されている作品にも、わたしならこうつけるかも、など、そんな楽しみ方もいいかもしれません。
画像はアートフェア東京2019に出品する川端実の作品の中から
「無題」
1978年 アクリル・キャンバス
142 × 106.5 ㎝
引用:「KAWABATA IN NEW YORK」原田治著