2024.4/24
李朝初期白磁耳盃
(写真 奥山晴日)
李朝初期白磁耳盃 14〜16世紀
朝鮮李朝時代の窯業は歴史的に不運な事が重なり、壊滅的なダメージを負いました。
朝鮮陶磁器の神様とまで言われた浅川伯教、赤星五郎氏の監修による、李朝陶磁の書載現品です。
この図録は私家本300部の豪華本で後に美術館所蔵となった作品や井上恒一氏、名品を数多く旧蔵していた日本画家の安田靫彦氏の所蔵品が数多く掲載されております。
この耳盃の製作年代に幅を持たせたのはこの図録と安田靫彦氏の独特の書体による箱書きにも粉引耳盃となっており、李朝陶磁器の研究が曖昧だった頃と思われます。
現在では初期白磁が一般的だと思われますが美術館によってはこの肌や秞張は高麗白磁に分類していて、見ようによっては高麗白磁や茶人の言う金海に見えます。
高麗には今のところ、この形態の耳盃は他の工芸品でも発表されて無いので李朝初期と見るのが妥当だとは思います。
耳盃は祭器の一種で敬拝しながら口に運んだ神聖なるものです。耳に傷や直しがあると手鉢同様に評価がぐっと下がります。
李朝陶磁はコピーや写し物が多いのですが特に耳盃には沢山出回っております。
この作品の軟陶の肌や秞調を映像や文面で説明するのは大変難しいのですが私の知っている限りでは一番時代が上る作品では無いかと思っております。
余談になりますが先日まで出展していた九段アートフェアでは歴史的な建物のなかで行われた為に若い人達が信じられないくらい来場してくれました。
来場者のほとんどがカメラか携帯の撮影をしていて、特に一番人気だったのがこの耳盃でした。
女子は口を揃えて「可愛い」と言うのには意外な感じを覚えました。
<参考文献>
浅川伯教『李朝の陶磁』、赤星五郎/昭和31年