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2015.10/22

京城美術倶楽部 目録



東美アートフェアには沢山のお客様にご来店頂き、ありがとうございました。毎年このフェアが終ると、めっきり秋めいて来ると同時に大きな交換会の大会が続き、仕入れには最も力が入ります。近年は良品不足と言われておりますが、それでも一年を通して一番商品が動く時期だと思います。

秋季一番最初の交換会で、遂に長年探していた資料が手に入りましたので、ご紹介いたします。
この本は、昭和初期、朝鮮がまだ日本の植民地だった頃、ソウルにあった京城美術倶楽部にて行われた美術品販売の競売目録です。小冊子のような形式で、写真も当然モノクロです。合計何冊出版されたのかも知りませんし、親しい古本屋や先輩方に聞いても知っている方がおりません。
先日、古本屋の販売目録で四冊掲載されているのを見つけ、すぐに連絡をいれましたが、売約済みで手に入れる事が出来ませんでした。悔しい思いをしていたところ、ようやく先日の交換会にて入手することができました。
聞くところによると、現在、韓国の美術愛好家のあいだでは、植民地時代に日本に渡った古陶磁や古美術などの買戻しが注目され、このような資料に掲載されているものが一番喜ばれるようです。この目録を初めて手に入れ見てみたところ、掲載されているものの中で、当店を経由してコレクターに納めさせて頂いた物もあり、感無量です。
このような貴重な目録が、古美術品の交換会に出てくる事は稀にあるのですが、先日の交換会では私が若い頃から垂涎の的だった図録が一度に沢山出てきました。以前なら欲しいものばかりでしたが、現在では既に持っているものだったので、この目録だけを購入いたしました。どの図録も私の好きなジャンルでしたので、出品者が気になり聞いてみたところ、先日亡くなられた、尊敬する先輩からの出品でした。
この先輩は、李朝ものでは大変な目利きと評判な人で、私自身も憧れていた方でした。晩年には、ご病気のため交換会などにもあまり出席されなくなっていましたが、そんなある日、広告で当店を知ったお客様から、突然に広告掲載の商品の問合せがあり、現物を見ないで購入されるという出来事がありました。十分に説明はしたものの、高額だったこともあり不安に思っていたところ、その先輩が私の事や商品を、そのお客様に推薦してくれていたと後日知り、たいへん嬉しく思い、何度か出かけて、やっとお店で会うことが出来た際に、お礼を述べさせていただきました。

長くなりましたが、長年あらゆる手をほどこしても見ることすら出来なかった図録が、このようなかたちで手元にきた時には、ただならぬご縁を感じ、形見分けをして頂いたような気持になりました。
(目録の作品については、また機会がありましたら少しづつ紹介いたします。)

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