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2023.12/27

工芸青花19掲載 染付円窓風景文壺





『工芸青花 19』が届きました。

布装、青の箔押しの表紙が美しく、目を引きます。



「精華抄」のコーナーにて、染付円窓風景文壺をご掲載いただきました。

東京文化財研究所の田代裕一朗さんに玉稿賜りました。ぜひご覧くださいませ。



染付円窓風景文壺 朝鮮時代(18世紀後半) 高14.6cm

「丸々とした青花の円壺である。口づくりはやや高く、内側に枘(ほぞ)があることから、おそらく元々は蓋を伴っていたのであろう。底の畳付には、十八世紀以降の作品によく見られる細かな砂目を確認できるが、この壺は長く愛されていたのか摩耗している。文様は、渦状の如意頭文が肩に巡らされ、胴体には二重円圏の風景文が四ケ所に配されている。この風景文、葦の間を虫が飛び交う情景を襞(ひだ)状の円窓が取り囲む文様である。しかし朝鮮時代後期における白磁の展開を踏まえるならば、この文様は「瀟湘八景」の最終形態と理解すべきであろう。瀟湘八景は、十八世紀以降の青花にしばしば登場する文様主題である。当初は画題の約束通り、「遠浦帰帆」ならば帆船、「洞庭秋月」ならば月、「平沙落雁」ならば雁の群れが描き込まれ、各画題が比較的よく描き分けられていた。しかしいつの頃からか、それらが渾然一体となった文様が生まれ、さらに図様が急速に抽象化していく。本作における円窓の襞は山並み、そして虫のように見えるのは雁が抽象化したものであろう。しかし抽象化の極致ながら、その文様は自然で、かつどこか詩情ただよう情景である。本作が製作されたと考えられる分院里(運用時代:一七五二-一八八三)の官窯は、漢江へと続く川のほとりに位置する。陶工たちの眼前に広がる川辺の風景が、文様のスパイスとなったのかもしれない。」

『工芸青花』第19号(新潮社)より転載

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