2022.10/5
朝鮮陶器に書かれた文字[2022東美アートフェア]
李朝の陶磁器に書かれた文字には、記録や種別といった実用目的のものと、漢詩からの抜粋や創作的な漢文など趣味的な目的のものとがあります。
例えば、見込みに「祭」と書かれていたり、底部に干支や「天」などと書いて制作年や所属を刻んだものは、祭器を日用雑器と区別するためのものです。
一方で後者は、酒宴での気分を高めるために書かれた詩や白磁の美しさを称えた詩、注文主の創作したオリジナルの詩文が書かれるケースなどもあったようです。
以前、工芸青花第4号に掲載いたしました、中川竹治旧蔵の李朝中期染付面取瓶に書かれていたのは酒に関する詩。
王維『渭城曲』と李白『將進酒』から七言ずつとられたものでした。
こちらの作品には過去のブログでもご紹介していますのでそちらもぜひご覧ください。
過去ブログ→「李朝 梅文面取り瓶」
李朝時代では、陶磁器を使う事ができるのは「両班」と呼ばれた一握りの貴族のみでしたから、それに書かれた文字も彼らの趣味を反映した高貴なものであったり、注文者の願いを込めたものであったりしたようです。
さて今回アートフェアの出品作のひとつ、染付文字入水滴。
堂々とした水滴で幅18㎝を超えます。
両班は舎廊房(サランバン)とよばれる書斎を生活および社交の場としました。その書棚にはこうした大型の水滴を鑑賞のために飾ることがありました。
上面に向き合うように配された「湖」「堂」の文字は非常に謹直で、大きな余白にも負けない力強さがあります。
何か古典の漢詩から一字をとったものなのか、定かではありませんが、注文者だった文人がこの2字に何らかの思いを込め、書かれたものなのではないでしょうか。
俗世と離れた湖のほとり、お堂でたたずむ文人の姿が目に浮かぶようです。
染付の色は濁りなく鮮やかで、文字の緊張感と相まって水辺のひんやりと張り詰めた空気を彷彿とさせます。
削ぎ落とされた造形要素で詩情を称える李朝美学が存分に表れた逸品です。
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染付文字入水滴(「堂」「湖」銘)
朝鮮時代18世紀
Water dropper with character of “tang” and “hu”, Blue and white porcelain
Joseon dynasty 18th century
H11.3×W18.3×D18.3㎝
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2022東美アートフェア|2022 Tobi Art Fair
10/14 Fri. 10:00〜19:00
10/15 Sat. 11:00〜18:00
10/16 Sun. 11:00〜17:00
東京美術倶楽部 ブースNo.4-27
Tokyo Art Club Booth No.4-27
https://toobi.co.jp/artfair
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