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2021.10/1

李朝螺鈿三段重

この李朝螺鈿三段重は最近入手したものです。









アジア諸国の中で螺鈿は花開き、人々を魅了してきました。同じ東洋でも装飾文様の違いやその時代の特徴が金属器や陶磁器と同じように現れます。日本には幸運にも多くの東洋の漆器作品が残り伝えられてきました。これは他の国にはない事です。古くから中国、朝鮮、そして日本の螺鈿の研究や美術館での展覧会等が行われてきました。

しかし朝鮮の螺鈿に関しては他の国と比較しても現存数が遥かに少なく、あっても19世紀の作品がほとんどです。

今日では、現存する高麗螺鈿は18点しかないといわれています。高麗螺鈿が13~14世紀の製作と考えると、その後の15~18世紀の螺鈿はどうなっているのでしょうか。朝鮮半島は不幸な歴史があり、工芸品にもその影があります。15世紀または16世紀と推定する作品は美術館や図録等では数点しか発表されていません。

この螺鈿の三段重の文様は、東京国立博物館収蔵の文箱をはじめ韓国国立博物館等にも収蔵されている作品と同様で、李氏朝鮮時代16~17世紀と推定されます。これらのような箱型の作品は当店でも数点取扱いをしているので、そこそこの現存数があるのだと思います。ですがこの三段重は初見で、図録にも紹介されていないものです。





(黒漆牡丹唐草文螺鈿長方形箱 東京国立博物館蔵)







高麗青磁にはたくさんの象嵌の蓋物が伝わってきています。この写真にある、螺鈿三段重と似た高麗青磁陰刻段重は大阪東洋陶磁美術館に所蔵されていて、本作との類似性を感じます。また形態や文様などを考えても李氏朝鮮時代16~17世紀の貴重な作品だと思います。

資料の少ない朝鮮の螺鈿に関して研究者の方がいらっしゃいましたら、是非意見交換をしたいと思います。また、高麗螺鈿と判断してもよいと思う作品も手元にありますので、機会があればまた紹介出来ればと思います。

・商談中

〈参考文献〉

『天下第一 翡色靑磁 THE BEST UNDER HEAVEN THE CELADONS OF KOREA』  韓国国立博物館/2012年

『螺鈿 —虹色に輝く貝と漆の芸術—』 徳川美術館/1999年

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