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2013.2/11

李朝鉄砂龍文壺



鉄砂雲龍文壺  朝鮮時代 17世紀 高33.5cm 径38.5cm     ( 御売約済み ) 


別の物の購入で行った先でこの壺を見せられたのは昨年末。気になりつつも目前に韓国旅行が迫っていたので、取り敢えず旅行に出かけた。
旅行の目的も美術館がメインなので、おのずと朝鮮陶磁に出会う。
梨花女子大、湖厳美術館、共に龍の文様の特別展を開催しており、なおさら同じような物が目につく。

売約をしてこなかったので、もう二泊三日が気になって気になってしょうがない。美術館には必ず同類の作品が並んでいるので、あれこれと較べているうちに、ふと大きさが気になりだした。(もしかしたら世界一大きくないか?) 
日本から離れているのでもう頭の中ではすご~い大きさになって膨らんでいった。

帰国し、急いで何十冊もの図録を探したが、やはり一番大きく感じる。美術品はもちろん大きさではないのは承知の上だが、大壺なら一番に越した事がない。ほぼ一日中、色々な図録を探したがやはり一番大きい。何だか良い気分で帰宅し、お風呂に入り食事をして、本棚の図録類をふと見た時、このブログでも以前紹介した静嘉堂文庫美術館収蔵の壺を思い出した。

その壺とは昨年、静嘉堂文庫美術館が朝鮮陶磁と漆芸の名品とした展覧会で突然、発表した中の1点。急いで図録のサイズを確かめると径38.6cm。(クゥ~~ッ!1㎜!!)そうだった。静嘉堂文庫美術館で、(随分大きくて魅力的な壺だなぁ~)と見入っていた壺だった。この時には、静嘉堂がこんなに朝鮮陶磁や華角張りを持っている事は一般的にはあまり知られておらず、さすがに静嘉堂だと感心させられ、結構、同業者やお客様とも話題になった展覧会だった。

17世紀初め、朝鮮半島はコバルト顔料不足や相次ぐ外国からの侵入により、窯業が一時途絶えたほど国内のダメージも多大だったようですが、そんな頃、その絵付けのもつ風情や個性が素朴を愛でる朝鮮中期の美意識と一致し、多くの鉄砂の作品を生み出しました。そのような情勢のなか、大きなキズもなく、早くから日本に伝世されてきたこの壺は、それだけでも価値の高い物です。

龍文はもちろん空想的な生き物なのでアジア諸国で良く見られる文様で、朝鮮陶磁器にも明らかに中国陶磁器からの文様を踏襲した精緻な物もあるが、この時代の鉄砂作品の多くは独特の力強さやユニークさを合わせ持っています。
 
 この壺はすぐに当店のお客様にお買い上げ頂き、たいへん気に入って頂いております。

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