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2011.6/13

蒔絵の勝虫

毎朝、開店前に香を焚きます。

焚くと言っても、香木からの本格的なものではなく

お線香をぷつっと二つに折って、火をつけるだけ。

お香の香りがたつだけで、清々しい空間が生まれます。

その、ぷつっと二つに折る時が個人的に小さな占いになっていて

きれいに真半分に折れたら、良い一日の始まりのような気になり

片寄って折れた時は一日慎重に過ごすようになりました。



そのお香を入れている丁度良い大きさの蒔絵の箱。

本来は何用でしょうか、段重だった物が一段だけになってしまっていたものです。



蜻蛉が蒔絵で描かれていますが、

蜻蛉を勝虫と呼んで縁起がいいとは聞いたことがある。

でもなぜに…


「日本書紀」の中にある故事。

雄略天皇という強い天皇が、歌を詠まれました。

現代文に訳すと

「狩りに出た山中で、アブに腕をかまれてしまった。

すぐに蜻蛉が飛んできて役に立とうとアブを食べてくれた。

だから、大和の国を蜻蛉(あきつ)島と言うのだ」と。

天皇が戦で蜻蛉に窮地を救われたことを暗示する歌で、

蜻蛉が何者か不明だそうですが、喜んだ雄略天皇は秋津国を与え、

その戦勝の故事から因んだそうです。


以降、幼虫のときは甲冑のような姿をし、

成虫になると空中で獲物を捕らえ飛ぶ姿の勇ましさと

決して後ろに下がらない「不転退」の精神を表すものとして、

特に武士に好まれました。

「勝虫」「勝軍虫」等と呼び、鎧兜や武具、陣羽織や印籠の装飾に

用いられ、そして、能装束などにも広く使われるようになったのだそうです。



今の時代に見る勝虫が群れ飛ぶこの図は、とても静かで平和そうです。


従業員R

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