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2021.5/8

埴輪〈帽子を被った男〉【青花の会骨董祭2021】

いよいよ青花の会骨董祭2021まで1ヶ月を切りました。

大塚美術は今年、「小像 −古代と現代−」と題した企画を行います。

以前から構想していた「像」をテーマとした企画。器や生活道具とは異なる造形原理、精神性から生まれたものたちの強さや面白みを、企画者である私自身も感じ、また皆様にも感じて頂けたらと思い青花の会骨董祭で開催することに致しました。



本日から、出品作を本ブログやインスタグラム(@otsuka_fineart)でご紹介してまいります。







埴輪〈帽子を被った男〉

古墳時代
H20.1×W12.3×D12.2㎝(本体のみ)



トップのまるい、おしゃれな帽子が印象的な埴輪です。
関東系の埴輪に特徴的な赤く焼き締まった土の味わいが良く、帽子や首から下にはモデリングの痕跡や櫛目文様が明瞭に残り、元々の作行きの良さを鮮明な状態で伝えています。

シンプルで伝わりやすい造形美、表情の親しみやすさが魅力の埴輪ですが、単純明快であるからこそ、そこから受ける印象は個体によって千差万別。本作は、切れ長の目に高く通った鼻筋、小さな口が特徴的で、可愛さや愛嬌よりも、遠くを見据えた知的で凛々しい青年の表情を想起させます。



埴輪の起源は弥生時代後期の器台に始まります。5世紀後半頃から人の形をしたものが作られるなど、造形や装飾の幅が広がり段々と華やかになってゆきました。本作は成熟した表現であることから6世紀頃の作品ではないかと考えられます。

古墳時代には、男性も長い髪であることを誇りに思っていたようで、「美豆良(みずら)」と呼ばれる髪型をしていました。
本作ようなおさげのように垂らした状態を「下げ美豆良」といい、王や盛装人、武人などの階級の高い人々がしていた髪型であったことがわかっています。



首元には、丸い連珠で表された首飾りが見られます。この時代の上層階級の男性たちは派手を好み、首飾りや美豆良飾りのほかにもたくさんの装身具を身に着け、煌びやかに着飾っていたようです。

頭部のみを残す本作ですが、元々はさぞ立派な装束を身にまとっていたのではないかと想像も膨らみます。



いにしえの風俗を今に伝えるだけでなく、古代の造り手が彫刻に込めた人間性の表現までをも伺い知ることができ、観るほどに興味が尽きない作品です。

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「小像 ー古代と現代ー」

青花の会|骨董祭2021
大塚美術ブース

※6月5日12:00よりOtsuka Fine Art onlineにて出品作の一部を販売致します。下記URLよりご覧ください。
Otsuka Fine Art online
https://otsuka-art.stores.jp
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□会期|6月4−6日(金土日)*4日は青花会員と御招待者
□会場|√K Contemporary(牛込神楽坂)

骨董祭に関する詳細は、下記ウェブサイトからご覧ください。
https://www.kogei-seika.jp/seikafes/2021.html

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