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2011.1/31

座辺の李朝

明けましておめでとうございます。
昨年中は色々なお客様に本当にお世話になりました。

 昨年末、ある壺が縁で、李朝のコレクターという方から
突然電話を頂いたので、早速うかがった時のことです。

挨拶もそこそこに、居間に並べられた沢山の品物を拝見したが、
どれも魅力的な物なので、そう褒めると、自分のこれ迄の
蒐集歴を懐かしむかのように話し始め、又、時々奥様の金策の
苦労話なども入り、李朝談議でだいぶ、和んで来た頃、
「もう自分も年だからこのコレクションを手放し、家を改築し
残りのお金で孫と遊びたい」と話して下さった。

 さて、困ったのは私の方で、
凄い執念で蒐集して来た事は感じられていたし、
拝見しながら随分褒めたので、値付けが難しくなってしまった。

正直に「このコレクションは魅力的ですが、
今の流行りと違うので、 数点を譲って欲しい」
と伝えると、
「それでは手放した物に未練が残るので嫌だから、
 全部まとめてこの値段で買って欲しい」と言われ
その日、話はまとまらずに帰宅した。

東京に戻り数日間、考えたが、やはりどれも今では簡単には
交換会に出て来る物ではないし、金額だけの問題なら、
こちらの希望の金額を提示してみようと再度、
御伺いさせて頂いた。

しかし、此方が心配する事無く、意外とあっさり承諾して
下さったので、少々戸惑ってしまった。「貴方は本当に
李朝物がお好きですね。それを感じたので、もう貴方に
買って戴こうと思っていました。資料も全部差し上げます。」
と言われ、
図録やら雑誌等のスクラップなどを沢山出して来られた。

今から40年前ぐらいの資料なので、殆んどがモノクロの
写真で、その中には、今迄に何処にも発表されていない様な、
貴重な写真も沢山含まれていた。

入手の経緯を聞いてみると、
中川竹治さんに色々教わりながら、集めて来られたとの事。
中川竹治さんはサラリーマンコレクターと自ら語り、
白磁と疵物に絞って見事なコレクションを作り上げ、
李朝数寄者の間でも「座辺の李朝」の著者として有名です。



その「座辺の李朝」の原稿も、中川さんから頂いた物ですが
と差し出された。中川氏とのやり取りの手紙やら葉書は、
さすがに辞退したが、貴重な資料を頂き、店に帰り
整理をして更に驚きました。

図録や研究書に書き込みが凄く、
まるで学生の教科書の様になっていたからです。
新聞広告の裏に一つ一つ瓶の形をボールペンで書き、
違いを確認したりしていて、
このコレクションが頷けるものでした。



今から40年ぐらい前なら、ちょうど、安宅産業を筆頭に、
文化人、作家、陶芸家などが、こぞって李朝を買い求めた時代で
日本も高度成長期の真っ只中ですが、
このようなコレクターがいたんだと思うと、
何だか新年から無性に嬉しくなりました。





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