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2014.7/17

李朝の秋草


(売約済み 個人蔵)




李朝の青花磁器のなかに「秋草手」と呼ばれる李朝愛好家の垂涎の的の一群があります。
愛好家の文学趣味を反映した呼称であり、必ずしも秋の草花とは限らず、その文様表現は余韻のある情緒を感じるものです。

李朝青花の草花文は15世紀から見られますが、その後の変遷過程にはまったく例が無いため推定できません。
そして17世紀後半のある時期に秋草手が現れたと想像され、18世紀前半に全盛を見ます。この時期の秋草の作品は、言葉では言い表せない乳白色のうるおいのある肌に余白を生かし、ひっそりと細い筆致の文様にこのうえなく情趣を感じさせられます。その後も草花文の系譜は受け継がれていきますが、磁器肌、文様表現、筆致、釉色、染付の発色においてしだいに風韻は薄れていきます。
李朝の磁器は中国、日本と較べると圧倒的に数が少なく、まして19世紀以前の青花磁器で文様の変わったものとなると探すのが大変です。そのなかでも秋草となると・・・・・? 欲しいですねぇ~!!!

掲載の瓶は18世紀後半から19世紀初頭の仙人草(クレマチス)の作品です。秋草手のなかで主役的な役割をはたしているのに、近年までよくわからない花とか、桔梗、撫子、十字花などと言われたそうですが、1988年の大阪東洋陶磁美術館で開催された、李朝秋草展の際に学者の方々の研究などから、幻の花「仙人草」が浮かんできたとの事で、現在ではこのように呼ばれているようです。


大阪東洋陶磁美術館 東洋陶磁シリーズ 李朝の秋草 の図録や解説文などを参考にさせていただきました。

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