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2011.4/21

ハーブ&ドロシー

公務員夫婦のアート収集のドキュメンタリー映画。



「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」をやっと見ることができた。
昨年から小さな映画館で上映され、口コミで評判を呼び上映期間延長し続けてきた映画。
それがとうとう4月末までとなったので、慌てて見に行った訳です。

美術が好きなハーブは郵便局員で夜間勤務しながら昼間は大学に行って美術を学び、
数時間の睡眠ををとってまた郵便局へ。
ドロシーは、美術に興味はなかったものの、御主人について行きたくて絵画スクールに通い始める。
結婚した二人は少しづつアートを買い始めた。

買う時の基準は二つ。

・自分達の収入で買える値段であること。

・そして、彼らの小さなアパートに収まるサイズであること。

その基準で集まったアート作品は4000点超。
とうとう1LDKのアパートに入りきらなくなったその作品は
長い年月の間に現代美術の一大コレクションとなって、値段の付けられないものに…

それをあっさりと、アメリカの国立美術館「ナショナル・ギャラリー」に1000点余、
全米50州の美術館に50点づつ、2500点。
全て、寄贈してしまった。

美術を愛し、その作者と親しみ、その作品の制作過程まで全てを知りたがる。
制作過程はその作家の成長過程だからと。
だから作家達からも愛されている。
クリスト、ソル・ルイット、ロバート・マンゴールド、チャック・クロース、
河原温、ドナルド・ジャッド、ロイ・リキテンスタイン…
かの画商レオ・キャステリでさえ、友好的であったとか。

更に、ご夫婦の素晴らしいところは、その1LDKの小さなアパートに住むような生活水準でありながら、集めた作品を、1点もお金に換えなかったこと。
数点、売りさえすればペントハウスに住めて、悠々自適な生活が送れるのに、
全くそういう対象として見ていないこと。

ナショナル・ギャラリーのキュレーターが、空になった部屋が申し訳ないから
ソファーでも買って下さいと気持ばかりの謝礼を渡したら、それでまた、作品を買ってしまった…



猫と熱帯魚と亀。お気に入りのチョコレート。
そして、何よりお互いが居たからこそ、出来たこと。

地位や名誉や投資の為ではなく、本当に「美」と素直に向き合う二人。
そんな二人の生活が淡々と描かれているだけの映画ですが、良かったです。
(このお二人がとにかく可愛らしく、微笑ましい)

上映期間もわずかですが、お時間のある方はご覧になってみて下さい。

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