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2015.12/28

李朝 梅文面取り瓶

3E5A3446 - コピー
(撮影 菅野 康晴)

新潮社 青花の第四号に掲載頂きました面取りの瓶です。ご存知の方も多いと思いますが、座辺の李朝の著者でもある中川竹治氏旧蔵作品で、本の中でも紹介されております。
この瓶は高さが30cm以上ありますが側面には王維と李白の2つの漢詩が書かれています。

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勸君更進(尽)一杯酒
(君に勧む更に尽くせ一杯の酒 王維『渭城曲』)

與爾同銷萬古愁
(爾と同に銷さん萬古の愁を 李白『將進酒』)


ともに、友との楽しげな酒の席を詠った詩であることから、当時は酒器として用いられたことがわかります。今でいう一升瓶のような存在でしょうか。この本のなかでも、ひと際中川氏の愛着が感じられます。
首がないにもかかわらず、そんなことは「一向に気にならぬ。」と書いてあります。
また「この瓶が酒瓶だとしたら、この徳利に相応しい酒盃とはどのようなものであったろうか?」と書かれており、私もたいへんに興味がありますが、この瓶の年代に合う磁器盃などは見たことがありません。
この瓶はキズがなければ当時でも仕入れられるようなものではなかったでしょうが、数年前にコレクターから譲り受け、後に当店のお客様に納めさせて頂いたものを今回掲載させて頂きました。
李朝の上手作品の特徴で、書画員が書いたと思われる梅花の絵は儒教を重んじ、貴重な呉須を出来るだけ少なく使用するために窓絵にしたとも言われています。空間を生かし実に優雅です。
この時代の青花の面取り瓶は美術館などでは散見されますが、数も少なく、民間ではまず見られないと思います。
この作品の桐箱には旧蔵者の中川竹治氏の箱書きと共にシール㊙と記載されており、中川氏の思いが偲ばれます。
現在の所有者様は新春に梅の枝を挿し、楽しんでいらっしゃるそうですが、私としても生涯忘れられない作品の一つです。

2015年も残り少なくなりました。
皆様、一年間ありがとうございました。



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